電子線トモグラフィー

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電子線トモグラフィーとは、電子顕微鏡を用いた3次元再構成法の一つで、同一視野を様々な方向からの投影された電子顕微鏡像をコンピュータの中で三次元像に再構成し、コンピュータを使って断層像(トモグラム)を作成する手法です。

 下記にその手順を順に述べていきます。

連続傾斜像の撮影

 この手法で撮影すると試料を特定の軸に対して一定間隔で回転した画像になります。また、回転角度が大きくなるにつれて視野は広くなるので、映っている物体は回転軸の中心に集まってきます。


1WDC-Tom-2dSet.png

1軸回転

1WDC-Tom1-2dSet.png

2軸回転


画像の補正

 傾斜画像では、視野全体がアンダーフォーカスとなるように、通常の電子顕微鏡撮影よりも大きなデフォカース値をとる場合が多いです。その場合、LaB6などの電子銃では第一トーンリングより外側の情報がほとんど無いために、CTF補正等は必要ありませんが、電界放出銃を利用した場合には、場合によっては間違った情報を与える場合があるので注意が必要です。

ラフ・アラインメント

 傾斜画像の中心付近の画像の相関から、それぞれの傾斜画像の大まかな位置を合わせます。

入力ファイル(Y軸周りに±60°の範囲で2°刻みで回転)

1WDC-Tom-2dSet.png
10°刻みで表示


前処理(窓関数)

 窓関数を掛けて画像端のノイズを除去します。


今回は横80%、縦90%の窓関数を掛けます。
コマンド(1枚目の場合): mrcImageWindowing -i Set1000.roi -o Set1000.mask -W 0.2 0.2 0.1 0.1


こちらのMakefileを使用すると全てのroiファイルについて処理を行います。
設定内容
# For Windowing
WIN_X=0.2
WIN_X_MAX=0.2
WIN_Y=0.1
WIN_Y_MAX=0.1
WIN_MODE=18
コマンド
make Windowing


出力ファイル

1WDC-Tom-mask-2dSet.png
10°刻みで表示


位置合わせ

 回転角度に応じて対象が平行移動しているので、位置を合わせます。このとき回転による影響を受けにくくするために隣同士の角度で位置合わせを行います。

例. 2°刻みで撮影した画像の場合
 2°画像の位置を0°画像の位置に合わせる
 4°画像の位置を位置補正後の2°画像の位置に合わせる
 6°画像の位置を位置補正後の4°画像の位置に合わせる
 .

 .


mrcImageCorrelationを使用した場合

 こちらのMakefileを使用して位置合わせを実行します。Makefileを使用せずにコマンドを逐次入力しても位置合わせは可能ですが、mrc2Dto3D用の入力ファイルリストを作成する必要があります。


実行例1
入力ファイル

1WDC-Tom-mask-2dSet.png
10°刻みで表示


コマンド
make CorFit1


1WDC-Tom-Fit-2d.png
10°刻みで表示


ファイン・アラインメント

 傾斜画像の軸の位置、角度を出来る限り一致させます。

3次元再構成

 2次元画像のセットから3次元画像を再構成します。


1WDC-shift1-3d.png
xy平面

1WDC-shift1-3d2.png
yz平面

1WDC-shift1-3d3.png
zx平面

最小

最大
平均値
標準偏差

標準誤差

0 (0, 0, 0)

4 (31, 26, 26)
0.0116844
0.147033

0.000287174


mrc2Dto3Dで実行

実行例1

 連続傾斜像の撮影で軸にズレがない場合は角度刻みをそのまま入力ファイルリストに設定します。


入力ファイル

1WDC-Tom-Fit-2d.png
10°刻みで表示


コマンド: mrc2Dto3D -i Input.3dlst -o Input.3d -m 1


こちらのMakefileを使用すれば、以下のコマンドでも実行できます。
make 3DList
make Input.3d


出力ファイル

Outdata-mrc2Dto3D.png
xy平面

Outdata1-mrc2Dto3D.png
yz平面

Outdata2-mrc2Dto3D.png
zx平面

最小

最大
平均値
標準偏差

標準誤差

-0.00437076 (39, 34, 36)

0.00799233 (37, 34, 36)
3.45089e-06
0.000342836

6.69601e-07


実行例2(2軸回転)

2軸で回転した画像にて3次元再構成を行います。
入力ファイル(X, Y軸周りに±60°の範囲でそれぞれ10°刻みで回転)

1WDC-Tom1-2dSet.png
X軸は30°、Y軸は10°刻みで表示


こちらのMakefileを使って、補正およびアラインメント、3次元再構成を行います。


コマンド
make All
出力ファイル
xy平面 yz平面 zx平面
Outdata-Tomogram2.png Outdata1-Tomogram2.png Outdata2-Tomogram2.png

最小

最大
平均値
標準偏差

標準誤差

-0.0012516 (30, 25, 51)

0.0027149 (31, 31, 38)
4.84671e-06
0.000196091

3.82989e-07


ラドン変換を使った3次元再構成で実行

 mrc2Dto3Dを使用するほかにラドン変換から3次元像を作る方法があります。ラドン変換は以下の流れで行います。


位置合わせ済みの2Dリスト
mrcImageSinogramCreate
シノグラムリスト
mrcRadon2Dto3D
3Dラドンファイル
mrcImageInverseRadonTransform

3Dファイル(完了)


こちらのMakefileを使い、mrc2Dto3Dの実行例2と同じ入力ファイルで実行します。


コマンド
make All
出力ファイル
xy平面 yz平面 zx平面
Outdata-Tomogram3.png Outdata1-Tomogram3.png Outdata2-Tomogram3.png

最小

最大
平均値
標準偏差

標準誤差

393.858 (36, 9, 39)

1427.57 (39, 39, 40)
612.613
138.895

0.194111


電子線トモグラフィー画像のもつ問題点

 全方位からの投影像を得られないために、ミッシングエリアとよばれる情報がない領域があります。そのため、方向依存でのボケを生じます。

トモグラフに使われる画像処理

平滑化

セグメンテーション

トモグラム画像の解釈 ==

 また、多様な構造を含むため、3次元画像から興味あるセグメントを切り出すなどの作業が必要です。そのための支援ソフトウェアが必要です。

== サブトモグラムの平均化==