研究内容

研究テーマ

生命の構造と機能の連関の研究 - 特に、タンパク質及びその複合体の構造-機能連関の研究 -

構造は機能を生み出す物理的背景です。生命は、その構造を基盤として、数多くの生物活性を生み出してきました。研究生活をスタートした時、「生命の中での、生物活性の構造-機能連関機構を覗き見たい。「機能を生み出す場」を白日の下にさらしたい。」という思いに駆られました。その思いは、今につながっています。
顕微鏡とは、小さい世界を見るための道具です。電子、光、計算機をプローブとして、小さい世界を覗き見る事ができます。そのための道具作りも必要となるでしょう。覗き見るべき世界は、我々の世界とは違う世界で、慣性力は働かず、粘性抵抗が支配する世界、熱揺動が支配する世界です。マクロな機械と同じ動作原理を用いているのでしょうか。それが知りたいのです。

研究のコンセプト

当研究室の研究コンセプトを情報工学的見地から表現すると、下記の図のようになります。

アーキテクチャとは、生命のもつ設計様式(仕様)。生命の目的に応じて、その構造(ハードウェア)は異なってくる。当研究室の目的は、その生命のもつアーキテクチャを解き明かすことにあります。特に、生物が動くいう機能を生み出す設計様式を知り、学ぶことが目的です。この知識は、例えば、ナノロボットの動作原理を考える重要な知見です。

例えば、細胞膜は、生命と非生命を切り分ける物質、エネルギーの境界を提供します。このことにより、細胞膜の内外に存在する、しない、或いは、濃度差という違いを生みだし、その結果、少なくとも1ビットの(内外、高低といった)「情報」を生み出します。この情報こそが、生命の成り立ちであると考えます。

※ウィルスは非生命として定義されていますが、自分自身が構造をもつものの、その構造は単体では自由エネルギー最小ともいえる状態にあり、構造の場合の数としては、1種類です。その意味で、情報量としては0ビットです。これもまた、非生命と云える理由の一つでしょう。

 また、細胞膜は、2次元反応場という特殊な反応空間を提供します。特定のナノ空間に反応場を閉じ込めることで、効率をあげるとともに、多様性を確保しています。アクチンフィラメントなどの細胞骨格系は、1次元の反応場、あるいは、シグナルを伝える「電線」でもあります。こうした次元の制御も、生物は、物理としても興味深い対象であると思います。

我々の研究室では、生物の様々な反応・現象の中でも、特に、生命が「うごく」ということをキーワードに動きを生み出すアーキテクチャを探ることを目的としています。同じ「うごく」といっても、筋肉のようなマクロなレベルで動きとして観察できるしくみ、鞭毛のような単細胞をうごかすしくみ、細胞内輸送のような細胞内小器官や染色体などを動かすしくみでは、それぞれのシステムにおけるアーキテクチャは大きく異なります。なぜなら目的が異なるからです。一方で、そのアーキテクチャを支える分子モーターと呼ばれるタンパク質、細胞骨格と呼ばれるタンパク質は共通であったり、類似のものです。生命は、そのたびに作り直すのではなく、「鋳掛けや」のように使い回すことに本質があると考えています。個別のアーキテクチャと共通のアーキテクチャ、そのそれぞれに生物の本質、「うごくこと」の本質を捉えたいと考えています。

これらのことを如何に知るか、そのための研究手法として観察技術の開発も重要だと考えています。

研究手法

● 顕微鏡: 電子顕微鏡、光学顕微鏡、計算機顕微鏡

顕微鏡という手段

顕微鏡とは、小さいものを拡大して観るための手段です。通常、みることができない世界を我々は観ることができます。

新しい「観察」手段としての計算機

計算機を、実世界である生命の世界を観察するための新しい「観察」手段、生物情報という雑多で複雑なデータの中から、ヒトが知りたい情報を取り出してくる手法を与えてくれる道具として取り扱おう。計算機顕微鏡はその一つの具体的なアプリケーションであると考えています。

「実験」と「観察」のバランスをとって、研究を進めたい。

実験: 理論や仮説が正しいかどうかを、人為的な操作により実地に確かめてみること。
観察: 事物の現象を自然の状態のまま客観的に見ること。 (岩波、国語辞典より)

構造生物学の研究方法は、「観察」と「実験」のサイクルにあります。客観的に、できる限り自然の状態のまま、生物の創り出した構造を「観察」すること、そして、その構造が生み出す(分子・原子レベルの)メカニズム(仕組み)を見出すこと、そして、その構造に揺動・摂動を与え、メカニズムの正当性を検証すること、そして改めて「観察」することと繰り返すことが重要です。

道具作り

新しい情報を得るためには、新しい道具作りが必要な場合が多くあります。

  • 画像処理ツール作成の為の環境の作成:Eos (Extensible Object-oriented System)
  • 電子顕微鏡画像の処理法
  • 構造情報の統合化手法の開発:計算機顕微鏡法の開発
  • 電子顕微鏡の改良
  • 生物情報統合化システム(CAIBI: Computer-Aided Integration of Biological Information)の開発に向けて。

「新しい観察は、新しい道具の必要性を感じさせ、新しい道具は、新しい観察を生み出すことがある」という立場で研究を進めたいと考えています。

  •  エネルギーを変換するシステムとしてのタンパク質
    • 化学エネルギーを、力学的エネルギーに変換する分子とその複合体。
    • ミオシン、アクチン、ダイニン、トロポミオシン、トロポニン
  • 細胞を作る力、細胞が動く力を求めて
    • 細胞骨格系
    • 筋肉のしくみ
  • 生命の構造を作り出している力の源泉を求めて。
    • 分子シャペロン、水溶性フラーレン、アミロイド

現在の研究プロジェクト

ビジョンを明確にすることがプロジェクト成功の秘訣ということ、しかも、それをきちんと文章として書き出すことが必須であるとのことを研究室を始めて10年を超えてようやく理解しました。自分の中の思い、言葉にしないものはないことと一緒であることも改めて納得しました。そこで、少しずつビジョン、アクションを書きとめておくことにします。

2012年度版

関連分野キーワード

    • 生物物理学
    • 構造生物学
    • 生化学
    • 情報工学
    • 画像処理工学